公益財団法人 自然農法国際研究開発センター 公益財団法人 自然農法国際研究開発センター

自然農法の基本的な考え方

自然農法に取り組む私たちにはいくつかの基本的な考え方があります。

1.自然を尊重して自然に教わる

自然界の巧妙な仕組みは、ただ眺めていても分かるものではありません。そのためにも自然を観察することです。

なぜ、あんな小さなタネから根や茎や葉ができ花が咲くのでしょう? 山の木々は誰が育てたのでしょう?自然の大きさ、仕組みの複雑さは私たち人類の経験の中では、その一部しか理解できていません。

それにもかかわらず私たちは人間の都合に合わせて草や微生物、昆虫の善し悪しを考えてしまいます。雑草や害虫、病原菌と呼んで排除しようとしています。自然の大きな仕組みの中では、みんな役割を持っているのですから、謙虚な姿勢で、その役割を考えることも重要なことなのです。

自然観察のポイントは次の3点です。

  1. 愛情を持って土や作物の声なき声を聞くこと
  2. 積極的に自然に働きかけてみて、謙虚な気持ちでその結果に学ぶ
  3. 全てのものに存在する意義があると思って観察すること

自然との関わり方を見直す

人間は他の動物と同じレベルで生を営むわけではありません。人間には自分を向上させる能力、知識や経験を伝える言葉があります。それを記録することも、田畑を耕して他の生物を育て、自ら食糧を生産することもできます。反対に化学物質を撒き散らして他の生物を殺すことも、自然を壊すことも可能です。

私たちは「より多くの生命が、より豊かに調和する自然の仕組み」を理解することで、自然に生かされているということを認識することができます。従って、人間には自然に矛盾することなく、環境に負担をかけない関わり方が求められていると思えるのです。

人間が自然に正しく関わることで、自然から豊かな恵みを享受することができます。例えば、水田を放置しておけば、やがて落ちた種籾(たねもみ)と稔(みの)る籾の数が同じになると言われています。そうならずに毎年、播いた籾の400倍の籾を収穫できるのは、人間が苗を育て、水田を作って育てているからです。また、赤トンボは人間が人工的に作った水田のなかで生息域が拡がり、その種類や数が増えると言われています。人間が植物や動物をじょうずに管理することで、自然は一層豊かな恵みをもたらしてくれます。

自然の仕組みを引き出す

自然の仕組みを理解し、その働きを引き出すことが、自然農法の原理である「土の力を発揮すること」にもつながっています。自然の仕組みの最たるものが「生物を介した循環」です。

この地球に生物が誕生してから35億年、この間に幾度となく急激な気候変化や多くの地殻変動があり、その度に生物は大きく減少したことでしょう。しかしその都度、自然はより豊かな大地を育んできました。

その中心的な役割を果たしたのは、植物と小動物、微生物です。植物やごく一部の微生物は太陽のエネルギーを固定して、糖やタンパク質、脂質などを合成します。この糖やタンパク質をエサにして、動物や昆虫などが生育します。植物や動物の遺体は小動物や微生物によって分解されて土に還り、植物に必要な栄養になり、より多くの、より多様な生命が生まれ、豊かな大地が形成されてきたのです。私たち人間も、この生物を介した循環の中で生まれ、生かされています。

今、この循環があちこちで切れてしまっています。都会では土そのものが見られなくなってきていますし、自然が豊かなはずの農村でも、様々な農薬や汚染物質によって、循環の要である小動物や微生物が激減しています。

私たちの生活も、石油製品に囲まれ、遠く離れた国の農産物を食べ、循環させることなく多くのゴミを排出しているのではないでしょうか。私たちは生命による循環と連鎖の中で生かされてきたことを再認識しなくてはなりません。

生物を介した物質・エネルギー・生命の循環

生物を介した物質・エネルギー・生命の循環

自然農法とは