第2回 無施肥・不耕起の草生栽培

概要
1. 草生栽培のきっかけ
2. 緑肥の選び方と管理の基本
3. 草刈りはスポーツだ!~大鎌を極める~
4. 自然にやさしい草生栽培 ~温暖化対策としての役割~

 

1. 草生栽培のきっかけ

 私が草生栽培を本格的に始めたのは、1990年に自然農法センターで有機栽培向き品種の育成をスタートさせた時でした。自然農法は未経験でしたが、それ以前から草生栽培に取り組んでいたので、緑肥のエンバクとクリムソンクローバーを条播きして、その間作に野菜を栽培すれば病害虫の発生が少なく無農薬で栽培できることを経験していました。このやり方でボカシ肥を使いながら草生栽培による育種を始めましたが、アブラムシの発生に悩まされるようになり、2001年より無施肥・不耕起に切り替えて多年生牧草オーチャードグラスの草生栽培に移行しました。それからはアブラムシが減って野菜の生育も自然な草姿を見せるようになり、品種育成が順調に進むようになりました。自然農法センターの定年を契機に、機械や農業資材に頼らず、鍬や鎌だけでできる一反百姓をやってみたいと考えていましたが、ちょうど自然農法センターの採種圃場の中で、石が混じった痩せ地のため栽培せず土づくりの目的でオーチャードグラスの草地にしていた畑がありました。この畑で草生栽培が可能かどうかを実証してみたいという気持ちもあり、退職後早速借りることにしました。当初は管理が行き届かず雑草も生い茂っていましたが、オーチャードグラスをそのまま生かす草生畑つくりをスタートさせました。最初に大鎌で畑全面の草を刈り倒し、乾燥させてから、1m幅の短冊状に十字鍬で草を剥いで畝にしていきました。オーチャードグラスは大株になっていたため、剥いだ根株を畝の中央に寄せ、その両脇にタネを播くようにしました。畝間に当たる草生帯は、そのまま幅1m残して、畝と草生の区画が交互になるように整えました(現在は草生帯の両側に刈り草を投入する溝を掘っているため、草生帯の幅を70㎝にしています)。

 草生帯は、最初の刈り取り後オーチャードグラスの新葉が再生してきて草生帯を覆うようになり、刈り取りが牧草を若返らせて雑草を抑えることを再確認しました。草地を剥いで畝にした所は土がふかふかになっており、そのまま播いたダイコン、カブは無施肥でもよく太りました。

 

  • ①草生畑つくりのスタート!まずは大鎌で草刈り

 

2. 緑肥の選び方と管理の基本

 草生栽培は果樹園に下草を生やす園地管理法で、牧草地のように刈り取った草を家畜の餌にする代わりに、果樹園では刈り取った下草を敷き草にし、それが土壌生物によって分解され肥料となって果樹を育てます。両者とも刈り取った草が家畜や果樹の栄養源になり、刈り取ることによって美しい牧草地の景観が保たれているのです。

 畑の草生として多年生牧草を播く場合に注意しなければならないのが、牧草の種類によっては作物と競合することです。放牧用や芝草用に用いられるブルーグラス類は、地下ほふく茎で増殖し、芝状のマットをつくるため、畝の中に草の根が伸びてきて作物の生育を抑えます。また、フェスク類は葉質が硬く鎌で刈るのに不向きです。今のところオーチャードグラスは野菜との競合が少なく、柔らかい葉で刈り取りしやすいため草生に適しています。オーチャードグラスは「果樹園の下草」という名称の由来が示すように、日陰でもよく育ちます。地力要求度が低いため痩せ地でもよく良く生育し、やや乾燥地した冷涼地に適します。また、カモガヤという和名で土手や道端にもよく自生しているので、身近な場所で見かけるようであればその地の気候風土に適しており、草生に取り入れてもよいでしょう。

 

  • ①草生栽培に適するオーチャードグラス(和名カモガヤ)

 

 草生栽培を成功させるためには、前述のように定期的に草刈りをして草丈を低く保ち、周囲から見ても管理されていることが分かるような景観を保つ(放置された草地でないことを示す)ことです。草刈りは、草丈が40㎝位に伸びた頃に、株元近くの茎のしっかりした箇所を狙って刈れば、よく切れて刈り跡が10〜15㎝の草丈になります。草の生長が早い春から初夏は2週間間隔、涼しくなれば1ヶ月間隔くらいが目安です。草生帯を放任にして茂みにしてしまうと害虫や野鼠の巣になり、雑草が増えて景観も悪くなってしまいます。また、草生栽培は無施肥にすることをお勧めします。肥料を施すと草生帯の牧草が旺盛になりすぎて害虫の発生を招き、草刈り回数が増えるばかりでなく、畝上の雑草の伸びも早く野菜の生長を妨げます。無施肥にすると野菜、雑草が根優先の生育をし、地上部もゆっくり生育して植物間の競争が穏やかになり、草刈りや除草に追われることはありません。また、自家採種する場合でもタネの遺伝的特性が草姿によく現れて、タネを採る株を選ぶときの見極めが容易になります。

 

3. 草刈りはスポーツだ!~大鎌を極める~


  自然育種園でよく使われる農具(上から)
   ①草かき:雑草がまだ小さいときに土の表面を掻いて除草
   ②十字鍬:草を剥いで裸地にする。畝の両脇に有機物を投入する溝を掘る
   ③大鎌:伸びた草生の草や雑草を刈り取る
   ④小鎌:畝に生えてきた低い雑草を刈り取る

 

 草生栽培では草刈りが大事な作業です。大鎌がなかった頃は刈り払い機を使っていましたが、排気ガスや肩こりに悩まされました。また、草に集まるカエルを傷つけてしまうことも問題でした。かといって、片手で使う小鎌では、広い面積を刈るのには時間がかかります。前回ご紹介した信州鎌の大鎌と出会ってからは、作業効率が格段に良くなり、草刈りが楽しいものになりました。両手を使い、立って刈る大鎌の草刈りにはちょっとしたコツがあります。茂った草を、刃全体を使って一気に刈ろうとすると、刃長が長い分抵抗も大きくなって力を多く必要とします。信州鎌は薄刃でよく切れるので、草に対して横へ滑らせて払うように少しずつ刈っていきます。すると刃先から順に草が切れ、抵抗も少なくてすみます。

 

 

 

 また、刈り払い機は草を地際まで刈るので土が乾燥しやすく、メヒシバやエノコログサなど一年生雑草が次第に増えていきますが、大鎌は地際から10〜15㎝のよく切れる箇所を狙うので刈りすぎず、再生が早く雑草をよく抑えてくれます。作業効率をよくするためには、刃の切れ味を常に良好に保つことが重要です。私は一列16mの草生帯を15分ほどで刈りますが、一列ごとに刃を研ぐようにしています。以前は砥石を使っていましたが、今は手軽に研げるダイヤモンドシャープナーを併用して(砥石は刃を修正するときに使用)、数回撫でるように研ぐだけです。草刈りは体力を使うので無理せず1日の草刈り時間を3時間ほどに決め、1反の畑の草生を3日かけて刈ります。気温が高くなる日中は草の切れが悪いのですが、朝夕の涼しい時や雨上がりなどの草がシャキッとしている時に刈るとおどろくほどよく切れます。私は古希を過ぎ後期高齢者に近い年齢になりましたが、大鎌を使い続けてきたおかげで、草刈りが全身運動となって体力維持に役立っています。季節や天候によって草質が変化するので、それに合わせて刈り方や方向を変えたり、体力に応じて柄の長さを調整したりといろいろ工夫します。草刈りをスポーツと捉えれば、大鎌の技を極める楽しみが生まれ長続きします。

 

 

  • ①石の多い土でも育つタマネギ

 

 刈り取った草は畝の両脇に掘った溝に熊手を使って入れますが、これだけでは有機物の量が充分とは言えません。そこで畝の上は、春作、夏作が終わり秋作までの畝が空いた期間だけメヒシバやエノコログサなどの夏雑草をそのまま伸ばす雑草草生にしています。秋作の畝を準備する時に、大きく伸びたこれらの夏雑草を刈り倒し、乾燥させてから根こそぎロール状に剥ぎ取ります。次に、溝の底にできている腐植土を畝上に掘り上げて溝を掘り直します。そこへ剥いだ夏雑草を入れて踏み込みます。夏雑草は生育が早く、タネを着けると乾物量が増すので豊富な有機物源になります。雑草を邪魔者にせず、土を肥やす緑肥として活用すれば、雑草にストレスを感じることはありません。

 このように自然育種園はオーチャードグラスだけでなく、畑に自然に生えてくる雑草たちも短期草生にして有機物生産に役立てているので、腐植土が絶えることなくつくられ、野菜が無施肥でもよく育ってくれると思っています。

 

  • ①タマネギ収穫後の畝を雑草(メヒシバ・エノコログサなど)草生にする

 

4. 自然にやさしい草生栽培 ~温暖化対策としての役割~

 ここで一般的に言われている草生栽培のメリットをご紹介します。草生帯の草の根が地中深く入ることで土壌の深耕効果や下層土壌への養分供給効果があります。草の根の周りには多様な微生物が増え、ミミズなど土壌動物の住処(すみか)になり、土壌団粒化が進み肥沃になります。また、草の根は土壌浸食を抑え、透水性を改善します。草生の効果を体感するのは、雨が降った時や乾燥が続いた時です。水たまりができないので雨上がりにすぐ農作業ができ、逆に乾燥が続いても土埃(つちぼこり)が立たず、いつも空気が爽やかで土で汚れることはありません。

 この草生栽培は今、温暖化対策として注目されています。草生の上を歩くと弾力があり根がよく張っているのがよく分かりますが、草生栽培に用いられるイネ科の植物は、光合成によってつくられた糖類を地下の細根に送り、その細根から有機炭素が土に供給されます。土壌中の有機炭素は微生物に分解されにくく、炭素が土壌中に溜まるのですが、この「土壌炭素貯留」の機能が世界的に注目されているのです。土壌炭素が増加すれば、それだけ大気中の CO2を吸収したと考えることができるのです。また、耕耘によって有機物が分解されCO2が放出されますが、不耕起にすることでも土壌炭素の放出が抑えられます。

 機械や資材に頼らず人力だけで行う自然育種園は、体力に応じた農作業しかできません。収量を上げようとポリマルチを使うとゴミが増えて環境を汚すことになります。人間本意の栽培をやめ、作物を自然に生育させて植物の自律する力を引き出すようにタネを育てていけば、無理な栽培から自然を痛めない栽培へと移行できるのではないかと思っています。

 おかげさまで自然育種園を始めて7年目、20品目の野菜を自給し、キュウリ、カボチャ、メロン、スイカ、トマト、ピーマンのオリジナル品種が生まれるようになりました。すばらしい自然の恵みに感謝しています。無施肥で栽培する不耕起・草生栽培が地球温暖化抑制や脱プラスチックにも役立っていることが、今後の農作業の大きな励みになっています。

 

大鎌のご注文については、【小林与一商店 026-255-2001】までお問い合わせください。

 

草地を大鎌で草刈り

 

秋野菜収穫期の様子

 

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自然農法の種子