海外レポート

自然農法センターがAPNAN(アジア太平洋自然農業ネットワーク)を通じて行っている普及活動と、中国における活動状況をご紹介します。
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タイ

サラブリ救世自然農法センター

サラブリ救世自然農法センター

現在、タイの首都バンコクから北東約100kmにあるサラブリセンターが東南アジアにおける自然農法普及の拠点となっています。
サラブリ救世自然農法センター(サラブリセンターと略す)は、1988年、東南アジアを中心に世界へ自然農法の情報発信を目的としてタイ・中部のサラブリ県に設立されました。このサラブリセンターには農場や畜舎、キノコ栽培施設といった農業用施設以外に、研修施設をはじめ、農業学校、食堂や宿舎等を備え、乾季対策用の養殖池を兼ねる多数の貯水池も作られています。当初、農家も活用しないような非常に痩せた土地であることから小面積からのスタートが検討されました。しかし、あえて難しい土地で成功させることがインパクトのある普及につながるとの見解から、約58ヘタクールの土地を入手し、EM(有用微生物群)を活用した自然農法による栽培を始め、現在は約70ヘクタールまで敷地を拡大しています。

サラブリセンターの栽培風景

サラブリセンターの栽培風景

このサラブリセンターにおける栽培の成果は、1989年コンケン大学で開催された第1回救世自然農法国際会議で紹介され、EM技術を用いた自然農法の可能性に対する理解を得ることができました。そこで、自然農法とEM技術をさらに検証し、栽培技術や成果を世界に発信していくべくAPNAN(アジア太平洋自然農業ネットワーク)が設立されました。APNANは、サラブリセンターをモデル農場として、自然農法の輪を東南アジア、南アジア、オセアニア地域を中心に普及してきました。
サラブリセンターは、自然農法やオーガニックを学ぶ民間施設として、多くの研修参加者を受け入れています。その数は、国外から3000人以上、国内では10万人を超えます。またその他多数の来訪者も訪れ、それぞれの国における目指すべきモデルになってきています。

ミャンマー

1992年APNAN加盟国であるミャンマーの政府機関(教育省)と当センターとの間で初めての協定書が締結され(後に農業省へ移管)、翌1993年に当センター国際課職員をヤンゴン市郊外レグーにある農業省中央農業開発訓練センターCADTC(後に中央農業研究研修センターCARTCと改称)へ派遣して現地での本格的な普及が始まりました。
農業灌漑省傘下機関のMAS(ミャンマー農業サービス)を窓口として、派遣職員による現場での技術指導、CARTCでの講習会開催の支援などを行い、3度の協定書の更新を経て、一時はミャンマー国内5カ所に普及の拠点が出来るなど、2009年まで共同プロジェクトが実施されました。その後ミャンマー側の方針変更によりこの共同プロジェクトは終了しました。

センランプロジェクトの看板と農場・家屋

センランプロジェクトの看板と農場・家屋

2011年3月、民政への移管によりミャンマーでの民主化の動きが進む中、民間団体からの自然農法への関心や要望を受けて、自然農法の普及を行う国内ネットワークの設立をミャンマー側に提案した結果、複数の民間団体が参加した新たな国内NGOであるMulti-Agri Development Association (MADA)が2014年に創設されました。
MADAは、「自分たちで国を復興していくべき」という願いのもとに立ち上げられ、活動を始めたばかりの団体であるが、ヤンゴン近辺の農家を中心に自然農法の普及を推し進めています。その1つに、フレッシュ&グリーンを意味するセンランプロジェクトがあります。このプロジェクトは、MADAのメンバーの1人が、農薬や化学肥料を一切使用しない栽培を行うために、約60haの土地に電気と水を整備した農地と家を貧しい農家に分け与えてモデル農場と位置づけ、自然農法栽培に取り組み始めたものです。現在、40家族の農家が同プロジェクトに加わり、自然農法のマーケット開拓も模索し始めています。
2015年8月には当センターとMADAとの間で協定書を結び、ミャンマーでの自然農法の普及を協力して推進することになり、新たな展開を期待しています。

調印式における記念撮影

調印式における記念撮影

ラオス

首都ビエンチャンにあるオーガニックマーケット

首都にあるオーガニックマーケット

ラオスのビエンチャン農業林業局と当センターは、2000年より協定書を結び、自然農法とEM技術の普及を行ってきました。2004年、同局がスイスのNGOヘルベタスとオーガニックマーケットプロジェクトの一環として、オーガニック農家グループの基本技術であるEM技術による自然農法の指導が行われました。プロジェクト開始当初は、サラブリセンターでラオス人グループ向けの国別研修会を毎年取り組んでいました。
現在は800軒を超える農家が、1000ヘクタールを超える面積でオーガニック農業を営んでいます。そして地区ごとにオーガニック農家をグループで立ち上げ、グループ内で代表や内部監査等の役を決め、外部機関の監査以外に自分たちでオーガニック栽培であることを確認し合いながら、市場への共同出荷の形態をとっています。
さらに各グループの代表がマーケットを運営する形式を用いているため、卸業者に搾取されないシステムとなっています。このプロジェクトは、農家が主体となって取り組める環境が整えられたことが成功のカギとなりました。ゼロからスタートしたオーガニックマーケットですが、いまではビエンチャンにおいてすっかり有名になっています。

ブータン

1993年、ブータンへEM技術を活用した自然農法が紹介され、1995年には農業省と協定書を結んで、同国への自然農法普及が始まりました。2000年には6つの学校が選抜されて自然農法・EM技術を導入し、農業省のCoRRB(再生可能自然資源研究評議会)と教育省による共同プロジェクトであるSAP(学校農業プログラム)が始まり、2010年には当センターとCoRRB との間に新たな協定書を締結しました。
現在ではブータン国内の学校551校中、約190校がこのSAPに参加して、生徒の課外活動としての自然農法、有機栽培の活動が行われており、職員の派遣による現場での視察や指導を通じてSAPの活動を支援してきました。毎年10月16日のWFD(世界食料デー)には、生徒達の課外活動の内容が最も優秀だったSAP参加校の表彰が行われ、ブータンでは全国ニュースや新聞で取り上げられる一大行事となっています。

中国

上海の大学における自然農法フォーラム

上海の大学における自然農法フォーラム

中国は、APNAN創設時のメンバーではなかったことと面積も大きな国であることから、APNANの加盟国とは分けて普及を行ってきました。初期においては、自然農法の活動に対して安定的に協力連携してくれる現地の団体がなかなか見つからず、1995年から職員を派遣しましたが限られた場所での普及しか行われませんでした。
その後、当センターの農業試験場(長野県松本市波田)で1991年から短期研修生、1997年からは客員研究員の受け入れを始め、以来多くの中国人研究者が当センターを訪れ自然農法の理念や技術を学んで帰国しました。中国からの客員研究員は30人、研修生は95人です(2016年3月現在)。その中には、農業科学院の院長や農業局の副局長、行政府の副市長、研究所の所長や副所長、大学教授などの立場に立つ人が多数いて、それぞれの立場で自然農法の普及に尽力しています。
これら元客員研究員や元短期研修生を中心とした自然農法フォーラムというネットワークが中国につくられて、2005年からこのフォーラム会員を中心とした「中国有機農業と自然農法国際フォーラム」大会を毎年中国で開催しています。
この大会は、山東省政府の協力支援があったことから、山東省内の都市で開催されてきましたが、近年では北京市や南京市でも開催されています。2015年は大学が主たる協力支援機関となって南京河海大学と上海大学の2会場で開催されました。
また当センターは吉林省農業科学院水稲研究所や山東省農業科学院落花生研究所などの研究機関と自然農法の共同研究を行っています。

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普及活動