公益財団法人 自然農法国際研究開発センター 公益財団法人 自然農法国際研究開発センター

自然農法の品種育成

自然に近い環境や有機栽培に適応しやすいタネを育成

自然農法センターでは、化学肥料や農薬を使用せず、外部からの有機物の投入を抑制し、常に緑肥や雑草との競合が存在する栽培条件下で、品種育成と採種を行っています。作物はタネを通して、自らが育った環境に適応するための情報を次世代に伝達します。したがって、前述の栽培条件下で育成・採種されたタネは、生育が旺盛であり、無施肥でも十分な生長を確保でき、病虫害や異常気象などのストレスに対して強く、食味と日持ち性に優れ、生命力にあふれています。

一方、多くの市販品種は、化学肥料や農薬を使用した近代化農業の下で、耐肥性・多肥性に富み、揃い性、収量性、流通上のロスを低減できる品種を目標に育成され、均一な環境に適応した遺伝的に均一性の高い品種となっています。私たちは、そうした「揃い」を重視して遺伝的均一性を高めてきたことが、逆に野菜の生命力を弱め、環境適応性を低下させてしまったのではないかと考えています。

また、農薬と化学肥料の使用を前提に育成されたタネ(品種)は、多様な生物に囲まれて生活する術を長らく失ってしまっています。言い換えると、そのようなタネは自然農法や有機栽培の環境下には最適化されていないと言えます。特に野菜においては、有機農業を前提に育成された品種が少なく、有機栽培用品種を中心とした栽培体系の開発も不十分であるため、有機農業が一般に普及しない要因の一つとなっています。

そのため、自然農法センターにおける品種育成は、野菜の生命力を回復させること、すなわち野菜の自立性を高めることを第一の目標としています。また、第二の目標として、耐病性や収量性など、野菜の栽培適応性を高めるために交配種も育成しています。

品種育成の目標

第一目標:野菜の自立を高める(固定種、交配種共通)
  • 環境適応性:雑草に負けない、高温・乾燥に強い
  • 少肥性:肥料に依存しない
  • 病虫害が少ない:病気への耐病性がある
  • 採種性:タネが採れやすい
第二目標:野菜の適応性を高める(交配種)
  • 環境適応性:環境に鈍感で作型が広い。
  • 病虫害が少ない:草勢が強く、ストレスに強い。
  • 高品質:日持ちがよく、品質・食味がよい。
  • 自家採種の素材:優良遺伝子が多く、地域に合ったタネが採れる。
  • 緑肥的にはたらき:完熟堆肥と極少量のボカシ、敷き草である程度収量が上がり、生育が旺盛のため土にかえる有機物が多い。
※ 品種育成の畑について
草生栽培(少肥料かつ常に緑肥や雑草との競合がある条件)を基本。
少肥でも必要な生長を確保でき、育てやすく、収量性もあり、食味のよい系統を繰り返し選抜。
また、品種育成の畑は無施肥、表層耕起、草生という自然に近い環境のなかで選抜・採種しています。ですから、純系化によるタネの弱勢を防ぐために、品種として許容できる範囲の遺伝的変異性を保ちながら表現型を揃えるように取り組んでいます。

品種育成の過程

  1. 01

    育種素材の探索

    在来種や固定種、交配種、自生種などから自然農法下で確実に生育し、子孫を残す力のあるものを見つけ出します。必要に応じてこれらの素材を掛け合わせ、変異性に富んだ素材を作成したりします。

  2. 02

    自然農法・草生栽培で選抜

    自然農法の栽培環境は施肥に依存しない栽培のため、地力を効率よく活用できる品種が重要だと考えています。育成環境は有機質肥料や堆肥といった外部からの有機物の投入を極力控えるため、ムギ・マメ類と野菜を輪作しながら両者を交互に作付けし、畝間に多年生牧草を生やし、その牧草を定期的に刈り取り野菜の株元に敷く緑肥草生栽培を行っています。
    そのなかで生育量が確保され、品質・食味が良く、タネを得ることができる個体を選抜します。また、低温育苗や自然生え育種法などにより、積極的に変異を引き出す工夫もしています。

    育種の畑の環境

  3. 03

    系統育成

    作物の受精機構に合わせた交配方法を行い、数年かけて自然農法に適した遺伝的性質を集積・固定させていきます。耐病性等のチェックも行います。

  4. 04

    品種比較試験/能力検定

    作物に付与したい性質や条件に合わせて、固定種化や交配種の組合せを検討します。さらに既存品種と比較栽培し、耐病性や収量性・品質等を調べ、優良系統や組合せを選びます。

  5. 05

    採種試験

    自然農法による採種の実用性を調べます。

  6. 06

    試作/栽培方法の検討

    試験採種したタネを用いて提携農家や当センターにおいて、数年間の試作を行い、品種の特徴をつかみ、より安定した栽培方法を検討します。

  7. 07

    品種発表

    試験を行い、育種目標にかなった品種は頒布品種として発表となります。
    新品種として発表する品種は、ユーザーの皆様のもとへ品質の良いタネをお届けするため、良質なタネを選別し、発芽検査、純度検査を経て合格したタネのみを頒布します。

    育種の畑

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