ナスは深根性で土壌や肥料条件への反応が鈍感なため、過湿・過乾燥など極端な悪条件でなければ栽培の失敗は少ないですが、温度(特に地温)により生育は大きな影響を受けます。ナスは高温性作物で、適温は22~30℃、17℃以下では生育が鈍ります。したがって十分に地温が確保できる時期をナスの旬と考えて栽培することが重要です。黒小町、紫御前、在来青ナス、自農丸ナス、信越水ナスは露地夏秋栽培に適応した品種で、ハウス栽培には不向きです(光量不足により着果が悪くなる)。在来青ナスは着果数が少ないので自家用向きです。
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ナスは自殖性作物で、自家採種に適しています。在来青ナスも自農丸ナスも固定種で、自家採種によって種子を維持、増殖することが容易です。ナスは通常の青果栽培では、果実を完熟させないで収穫していますが、タネとりをする場合は、果実を完熟させる必要があります。 まず成り疲れになる前の最も草勢の充実した時期に、草勢、枝ぶり、果形、大きさ、果色など品種の特徴を良く現している株を選び、収穫を止めて採種果を着けます。
ナスは1果採種量が多いので、小規模採種では、採種株は1~2株あれば充分です。また採種果も1~3果着けば良いでしょう。採種果を着けた株は、枝の伸張が鈍り、落花も多くなり、通常の収穫はできなくなります。採種果の数が少なく、採種果の負担より草勢が勝る場合は、少ないながらも収穫を続けられることもあります。
採種果は品種固有の大きさまで肥大すると、しだいにナス特有の黒紫色や果実の光沢がなくなり、55~60日程度で黄褐色の成熟果となります。採種果内部の種子が発芽力を持つようになるためには、最低40日は木から栄養補給を受ける必要があり、採種果はできるだけ長く木につけておきたいです。採種果収穫の目安は、着果後55~60日です。種子の充実もナス自体の活性と関係があるので、秋に気温が下がり、ナスの生育が鈍れば、長く着けておいても果実の成熟は進まず、種子の充実も悪くなります。したがってタネとり用の果実は、平均気温17℃を割り込む日から夏に向かって60日さかのぼった時期に着果させます。寒冷地で8月初旬、温暖地では8月中旬です。
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