「苗半作」と昔から言われているように、作物が畑の中で自律した生育になるかは、育苗時期の管理が影響します。
養水分を多く好むメタボな体質になるか、自ら根を伸ばし光合成を活発に行う代謝の良い体質になるかは生育の早い段階で決まります。
なぜなら、作物はその一生の初期段階から、根や葉などを駆使して周囲の環境を認識し、その後の生育の方針を決めているからです。
育苗の目標として、花芽の充実を促すために光合成を活発にさせ、根張りの良い活着の良い苗を目指しましょう。
育苗は直播きに比べ手間はかかることはありますが、生育期間の長い果菜類は最初に手間をかけることで以下のようなメリットがあります。
育苗管理のポイントは、畑で経験するさまざまな体験を育苗期間中に経験させることです。
温度変化や乾燥、湿気のある状態などさまざまな体験をさせながら生育のバランスをとって、花芽の充実を図るメリハリある管理をすることです。
作物ごとの生育適温を知ることは大事なことです。参考にナス科、ウリ科の生育適温は下図のようになっています。
ただ、それぞれの適温を覚えるのは大変なので、限界温度だけ把握してください。
人も暑すぎると熱中症になり、寒すぎると血流が悪くなり体調を崩すのと同じです。基本は光条件(天候)に合わせて加温や換気をしてください。
水管理は、光条件(天候)と温度管理に合わせるのが基本です。
晴天は温度が上昇するので、朝に水をやり、夕方には土の表面が乾くくらいが適量です。
曇天の場合、温度上昇も緩やかなので水やりを控え、しおれない限り何もしなくてよいでしょう。
1回にかける量を少なくすると、回数が増えて手間がかかり、作物にもこらえさせる状況が少ないためメリハリある管理が出来ません。
そこで、朝に水をやり、昼間は乾いている所のみ水をやってムラをなくし、夕方には、土の表面が乾く程度を目指します。
果菜類の特徴として、茎と葉が伸びる栄養生長と花が咲き実がなる生殖生長が並行して進みます。 発芽して間もない時期からこの二つの生長が始まります。花芽分化が始まるおよその時期を下図に示しました。
定植日は平均気温16℃以上となる時期(ナス・ピーマンは平均17℃以上)を目安として、そこから育苗日数を逆算して晴天の日に播種します。
トマト、ナス、ピーマンなら5mm、キュウリ、メロンなら5~7mm、カボチャなら7~10mm です。また、ウリ科はタネの向きをそろえて播きます。
鉢上げは花芽分化が開始する頃に行います。 目安はトマト、ナス、ピーマン(本葉1.5~2枚)カボチャ、キュウリ、メロン、マクワウリは双葉が揃ったころ頃に行います。 事前にポットに土を詰め、温めておきます。 鉢上げ前は水やりを控えておき、鉢上げ後に水をやりましょう。
※苗をほぐす前に水をやると土が湿っているため、必要以上に根を切ってしまうからです。
手早くやらないと根が乾き、枯れてしまうため、注意しましょう。
鉢上げしたその日の晩、根が切れているため、地温を少し高くして(2℃ほど)、活着を促しましょう。
早朝、葉の縁に露がつけば、根が活動を始めた証拠です。
葉の縁の露は苗の体内に入るので触らないで下さい。
苗の軟弱化、徒長を抑えるため、葉が重ならない程度に鉢の間隔を広げ、葉に十分光を当てます。 遅れると苗を徒長させるので注意しましょう。
定植7~10日前から夜間、外気の温度に慣らさせます(気温10℃を下回る場合は加温してください)。
ちなみに本葉8枚に展開したトマトは、第3花房まで花芽が分化しています。極端な温度管理をすると花芽がつかなくなることがあるので注意しましょう。
苗は根が鉢土をうっすらと覆う程度が適期です。
風の無い、晴天の温かな時間に定植します。
畑が乾いているようなら予め植え穴にジョウロでたっぷりと水をやります。
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