公益財団法人 自然農法国際研究開発センター 公益財団法人 自然農法国際研究開発センター

認証を希望される方へ

有機JASの申請を考えている生産農家の方々にとって、是非知っておいていただきたい情報です。
また、すでに認証を受けている方も再度ご確認ください。

有機JAS制度を理解する

なぜ、認証を受けなければならないのか?

JAS法が1999年7月22日に改正され、「有機農産物」、「有機加工品」及び「有機畜産物(令和2年7月)」が『指定農林物資』に指定されました。これにより「有機」や「オーガニック」という表示をするためには、格付の表示、つまり、有機JASマークを貼らなければならなくなりました。この格付の表示を行うためには、農林水産大臣の認可を受けた登録認証機関から認証を受ける必要があります。

つまり、生産した農産物を「有機農産物」と表示して出荷、販売するためです。

  • 農林物資:飲食料品および油脂、農産物、林産物、畜産物、水産物並びにそれらの加工品
  • 格付:生産された農産物が、生産方法を定めた有機農産物の日本農林規格(有機JAS規格)に適った方法で生産されたことを、登録認証機関から認証を受けた事業者が、自ら確認(格付検査)すること。また、有機JASマークを貼付することを格付表示と呼びます。
表示の対象

JAS法で表示規制の対象となる農産物は、ほ場で生産される農産物、採取場に自生する農産物(山菜など)や栽培場で生産される農産物(きのこ類など)です。

規格対象農産物

れき耕栽培のわさび、水耕栽培やロックウール栽培の農産物は土壌で栽培されていないため、ほ場で生産される農産物と見なされず、規格の対象外であり、有機JASマークを貼ることも「有機」という表示もできません。

スプラウト類は対象となります。

JAS制度における自己格付の責任

現在のJAS制度では、「自己格付」という仕組みを導入しています。生産農家(JAS法では「有機農産物の生産行程管理者」という)が、自分のほ場で生産した農産物が有機JAS規格に適合していることを自ら検査・確認し、合格した農産物を「有機農産物」と格付することができるようになっています。その反面、生産者の責任は重く、生産農家が有機JAS制度を適切に運用することが求められます。
(参考:農水省HP「有機JAS規格の格付の仕組み」

生産農家は、まず、
有機農産物の日本農林規格
有機農産物の生産行程管理者の認証の技術的基準
を理解し、これらに適応した生産方法のルールを決めます。この生産方法のルールは、 栽培の方法や機械の管理、格付の方法など、栽培から出荷までの一連の作業が網羅されている必要があります。

次に、このルールを基に栽培を行うと同時に、自ら作ったルールを守っているかどうかを証明するための記録類を作成します。

登録認証機関は、「生産農家が作ったルールが適切か?」「ルールを守っていることを証明する記録類が作成されているか?」といった内容をチェックします。有機JASに見合った生産と生産行程の管理ができると判断した生産農家を認証します。

認証を受けた生産農家は自ら格付を行い、有機JASマークを貼付し「有機」と表示した農産物を出荷できるようになります。

有機農産物の生産の原則

有機農産物の生産にあたっては、有機農産物の日本農林規格で定められている「生産の原則」に従う必要があります。

「有機農産物の生産の原則」

有機農産物の日本農林規格より:一部要約

  1. 基本的に、化学的に合成された肥料・土壌改良資材や農薬を使わず、土壌の性質に由来する生産力を発揮させる。
  2. できる限り環境へ負荷をかけない栽培管理をする。
  3. 自生している農産物を採取する場合は、採取場の生態系を維持する。

肥料・土壌改良資材については表A.1に、農薬については表B.1に、収穫以降に使用する資材などは表D.1に記載されたものであれば、有機管理に使用することができます。ただし、どうしても必要な場合に限られます。
また、附属書などに記載されていない資材を「使用禁止資材」と呼びます。

ほ場(水田、畑)の条件

使用禁止資材の不使用と飛来・流入防止対策

有機農産物を生産するほ場では、肥料、土壌改良材、農薬として、使用禁止資材を使用しないとともに、ほ場に使用禁止資材が飛来、流入しないように防止対策をとる必要があります。

慣行栽培のほ場と隣接している場合は、境界から離して作付けすること(緩衝地帯の設置)や樹木やネット、板などで使用禁止資材の飛来・混入を防いだりします。また、水田では用水を通して使用禁止資材が水田に直接流入することがないように対策をとる必要があります。用排水兼用の水路や上流で慣行栽培のほ場から排水が入る構造の水路を利用している場合などは、浄化水田の設置等が必要です。

加えて、有機管理に使用する機械・器具などを介して、使用禁止資材がほ場に入るおそれも考えられますので、有機専用にするか、兼用する場合は「洗浄する」などの区分管理が求められます。


有機管理年数の条件

有機農産物を生産するほ場が認証されるために求められる有機管理の年数は、作付けする作物の種類によって異なります。

一年生作物(多年生作物以外)の場合

有機農産物の日本農林規格より:一部要約

播種又は定植(植え付け)の前に2年以上の間、使用禁止資材を使用せずに、栽培管理を行っていること。

一年生作物とは、一般的に1年以内で、播種・定植から収穫までが完了する作物で、水稲、トマト、キュウリ、ナス、ピーマン、ハクサイ、キャベツ、小松菜、ダイコンなどが該当します。

多年生作物の場合

有機農産物の日本農林規格より:一部要約

収穫する前から3年以上の間、使用禁止資材を使用せずに、栽培管理を行っていること。

多年生作物とは、開花、結実しても枯死せずに株の全体、または一部が生き残り、長年にわたって生育、開花を繰り返す作物で、果樹、茶木、アスパラガス等が該当します。なお、こんにゃくは該当しません。

使用禁止資材を使用しているほ場は、申請することができませんので、現在、使用している資材が有機管理で使用できるかどうか、申請する前に必ず確認してください。

使用する種子・苗について
有機管理で使用できる種子と苗は、有機農産物の日本農林規格に段階的に定められています。入手困難である場合や品種更新など、やむを得ない理由がある場合を除き、原則、有機管理で栽培されたものを使用するのが基本です。
やむを得ない場合には、有機でない一般の種子や苗を使用することができますが、有機で栽培された種子や苗を確保できるように最大限の努力をしてください。

まずは資材の確認から

申請を検討されてい生産農家の方は、まず最初に、現在、使用している或はこれから使用しようとしている資材について、有機農産物の日本農林規格に適合しているかどうか確認する必要があります。

表A.1-肥料及び土壌改良資材
  1. 資材や土壌改良資材が有機JAS規格の表A.1のどの資材に該当するか確認する。
    例えば、
    • なたね油粕 → 「油かす類」
    • 生ごみ堆肥 → 「発酵した食品廃棄物由来の資材」
    • 魚粉 → 「と畜場又は水産加工場からの動物性産品由来の資材」
  2. 表A.1の基準を満たしているかどうか確認する。
    食品工場及び繊維工場からの農畜水産物由来の資材での場合、基準欄の「天然物質又は化学的処理(有機溶媒による油の抽出を除く。)を行っていない天然物質に由来するものであること。」と記載がありますので、この条件を満たす原材料であるか確認する。

    【油粕の原材料に関する見解】

    油粕は、作物から油を抽出する際にヘキサンなどの有機溶媒を用いる場合が多いのですが、これは容認されています。また、同様に原材料の菜種、綿実、大豆などは、有機栽培されていなくてもかまいません。ただし、遺伝子組み換え技術を用いて生産されたものを使用していた場合は適合しません(現在、経過措置により遺伝子組み換え技術を用いて生産された作物から搾油した後の油粕も使用可能となっています。)

  3. 表A.1のいずれの項目にも該当しない資材は、「その他の肥料及び土壌改良資材」に該当するので、その基準を満たしているかどうか確認する。
    その基準は以下の通り。

    【その他の肥料及び土壌改良資材の基準】

    植物の栄養に供すること又は植物の栽培に資するため土壌の性質に変化をもたらすことを目的として土地に施される物(生物を含む。)及び植物の栄養に供することを目的として植物に施される物(生物を含む。)であって、天然物質又は天然物質に由来するもの(天然物質を燃焼、焼成、溶融、乾留又はけん化することにより製造されたもの並びに天然物質から化学的な方法によらずに製造されたものに限る。)であり、かつ、病害虫の防除効果を有することが客観的に明らかなものでないこと。ただし、この資材はこの表に掲げる他の資材によっては土壌の性質に由来する農地の生産力の維持増進を図ることができない場合に限り使用することができる。

    【用語補足】

    燃 焼:
    光と熱を発して酸素と化合する反応。いわゆる燃えること。焼くこと。 例)くん炭
    焼 成:
    原料を加温または燃焼させて加工すること。 例)けいそう土焼成粒
    溶 融:
    固体を熱によって溶かし液状とすること。  例)熔りん
    乾 留:
    空気を遮断して固体を加熱分解し、揮発成分を冷却・回収すること。 例)木酢液
    けん化:
    エステル物質にアルカリを作用させ、加水分解作用によりアルカリ塩とアルコールを生成させること。 例)石けん
表B.1-農薬

有機管理に農薬を使用する場合は、有機JAS規格の表B.1を基に以下のことを確認する。

  • 表B.1にある農薬に分類されている
  • 表B.1の基準を満たしている原材料を使用している

表B.1に記載されていない農薬は使えません。つまり、ストチュウなどの自家製資材は病害虫防除の目的で使用することはできません。ただし、表A.1に該当する資材(自家製資材含)であれば、肥料若しくは土壌改良資材として使用できます。 また、表B.1に記載されている農薬を使用する場合は農薬取締法を遵守し、対象農作物、対象病害虫、使用方法、使用量、使用回数など、使用上の用法を守って、適切に使用してください。間違った使用は、農薬取締法違反となりますのでご注意ください。

加えて、表B.1の農薬が使用できるのは、農産物に重大な損害が生ずる危険が急迫している場合であって、耕種的防除、物理的防除、生物的防除又はこれらを適切に組み合わせた方法のみによってはほ場における有害動植物を効果的に防除することができない場合に限られます。決して無制限に使える訳ではありません。

表C.1-薬剤

収穫以後の工程における有害動植物の防除又は品質の保持改善は,物理的又は生物の機能を利用した方法によらなければなりません。ただし物理的又は生物の機能を利用した方法のみによっては効果が不十分な場合は,次の資材に限り使えます。ただし,a)の資材を使用するときは,農産物への混入を防止しなければならないとされています。

  • a) 有害動植物の防除目的で使用する表B.1 の農薬,表C.1 の薬剤並びに食品及び添加物(これらを原材料として加工したものを含み,農産物に対して病害虫を防除する目的で使用するものを除く。)
  • b) 農産物の品質の保持改善目的で使用する表D.1 の調製用等資材
表D.1-調製用等資材
調製用等資材とは、洗浄や保管上の品質保持等に用いられる資材です。柿の渋抜きに焼酎などを使用する際の焼酎が調製用等資材となりますので、それが表D.1に適合しているか分類、基準を基に確認する。
有機農産物のJAS規格別表等への適合性評価済み資材リスト

詳しくは以下のページをご覧ください。

有機JAS資材について ページへ

記録類の整備

自己格付を導入した有機食品の検査認証制度では、ほ場で生産し、出荷する農産物が有機農産物であるかどうかを証明するのは、日々の記録類です。申請の際には、この記録類が必要になります(認証されたあとも引き続き記録類の作成は必要)。
申請を考えている生産農家の方は、どのような記録を作成する必要があるのか、申請書類の準備をお願いします。

日々の記録類
毎日の記録こそが、各種提出書類を作成する元となります。
「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「どのくらいの量を」「どのように処理したか」
などを漏れなく記録する習慣をつけましょう。

例えば「5月1日」「西の田んぼで」「私こと自農太郎が」「3月15日仕込んだ、自家製のEMボカシⅡ型を」「10aあたり100kg」「オーガニック専用のブロードキャスターで散布した」といった具合です。
どのような記録が必要か?

日々の記録には、以下の内容が分かるように記録されている必要があります。

  • ほ場の所在地(どこで栽培するのか)
  • 生産する作物の種類(何を栽培するのか)
  • 栽培面積
  • 作業日と作業内容(いつどのような作業をしたのか)
  • 使用した種子・苗の名称とその使用量若しくは購入量(何をどれだけ使用したか)
  • 使用した資材の名称と使用量(肥料・土壌改良資材・農薬は、何をどれだけ使用したか)
  • 使用した機械・器具の名称と管理方法(使用した機械や器具類が何で、その際清掃等の区分管理がおこなわれたかどうか)
  • 収穫以降の工程に係る管理方法(収穫・輸送・選別・調製・洗浄・貯蔵・包装などの作業において、有機農産物とそれ以外が混同しないようにどのように作業したのか)

これらの項目が記録できる書式を用意しております。
必要な方は、申請書式一覧ページの申請書式一覧(有機農産物の生産行程管理者)から書式(農S-1.2.3.4.5)をダウンロードしてご活用ください。

伝票類(根拠書類)の保存

記録や書類の正当性を証明してくれるのは各種伝票類です。資材の購入伝票、農産物の出荷伝票などは、根拠書類と呼ばれ、生産農家が作成した記録類の正当性を与えるものとして、紛失しないように適切に保存する必要があります。仮に伝票などがない場合にもそれに替わるものとして記録に残し、また、資材や収穫物の保管場所、在庫量なども、状況が分かるように記録を作成することが望ましいです。また、根拠書類を含む記録類は、一定期間保存することが法的に義務づけられていますので、検査・調査が終わったからといって、すぐに捨ててはいけません。

申請に際し、過去2年以上(多年生作物の場合は3年以上)の記録を提出する必要があります。仮に、過去1年間の記録しか提出できない場合は、転換期間中のほ場で申請となります。また、有機管理はしていたが、過去の記録が全くなく、今年から記録を始めた場合は、今年が有機管理開始の1年目となります。

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