公益財団法人 自然農法国際研究開発センター 公益財団法人 自然農法国際研究開発センター

水稲栽培・・・中干しとイネへのケア2017.8.30

知多草木農場の水稲栽培では出穂の30日前頃になったら落水して10~14日間ほど中干しをし、水田内に5~10mおきに作溝します。

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中干しの主な効果は以下の4つが知られており、当地では毎年行っています。

①イネの根を下層土に向けて伸長させて耐倒伏性を高める。

②イネが土壌窒素を必要以上に吸収して過剰分けつすることを防止し、登熟歩合を高める。

③土に酸素が供給されることで土中の有害物質(硫化水素、有機酸など)が無毒化され、その後のイネの生育がよくなる。

④地耐力が高まり、稲刈り時にコンバインでスムーズに作業できる。

しかし、中干しのデメリットとして、水を切らすことでイネには大なり小なりストレスがかかります。そのため、水田の土や作期、品種によっては出穂後に栄養不良を起こし、籾数が減ったり、登熟歩合が悪くなることがあります。なので、中干しによってダメージを負ったイネへのケアと、出穂期以降も充実した稲体を維持できることを図って、窒素成分の追肥(穂肥)をEMボカシで施用します。

ただし、施用の際に以下2つを注意します。

①施用量:稲体に蓄積された炭水化物量を基準に決めます。炭水化物が多く蓄積されていれば窒素をやや多めに施しても同化されて増収に繋がります。反対に蓄積量が少ない場合は、窒素が余剰となりイモチ病発生や食味低下の原因となります。炭水化物含量の調べ方は【追肥の診断方法平成28年度自然農法技術交流会資料集より)】に準じ、今回の葉鞘の染色率は7本の平均で58%だったので窒素成分で10aあたり2kg相当量を追肥しました。

写真2

②施用する時期:イネは出穂する20日前までは節間が伸長するため、前もって早めに施用すると倒伏する恐れがあります。なので、EMボカシに含まれる窒素の肥効が出穂の20日前を切った頃に発現するタイミングで施用します。ボカシ肥は化学肥料に比べると肥効は緩やかですが、今時分の日中は水温も地温も30℃近くあるので、ボカシ肥でも施用後20日も経過すれば肥効は現れます【温度で変わる窒素供給(自然農法54号より)】ので、施用のタイミングとしては出穂の30日前を切った頃を目安にします(今年は20日前に実施しました)。

この田んぼの出穂期は9月10日頃の予定なので、もう少し地耐力が高まるまで中干しを続けて、9月には再入水する計画です。(H.Y.)

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圃場だより